愛を邪魔する霊障

第6話 幸せの絶頂にいる二人を追い詰めた自殺霊

理絵さん(24才)と卓也さん(24才)は、毎日が楽しくて仕方なく、二人とも仕事が終わると飛ぶように帰宅しました。無理もありません。先月まで遠距離恋愛だった二人がマンションの一室で一緒に暮らすようになったのですから。 卓也さんは司法試験合格を目指し、塾講師のバイトをしながら勉強中。理絵さんは地元の信用金庫を退職したのを機に上京し、ネイリストとして働き始めたばかりです。高校時代の同級生でともに夢を持つ二人ですから、励まし合い、癒し合いながら、一緒にいることの幸福感を満喫している毎日でした。 「卓也は絶対合格する!私、信じてるから」「理絵、お客さんからの指名がたくさん入るように頑張れよ。応援してるぞ」

そんな生活に異変が起きたのは、二人の暮らしが二カ月目を迎えた頃でした。卓也さんがバイトの後、スーパーで買い物をして帰ってくると、先に理絵さんが帰っているはずの部屋が真っ暗です。 「まだ帰ってないのか…」そうつぶやきながら電気を点けると、部屋の中央に理絵さんがしゃがみ込んでいるではありませんか。 「理絵、なんだよ。電気も点けないで」そう言いながら理絵さんに近づいて行った卓也さんは目を見張りました。理絵さんが剃刀を手首に当てているのです。 「理絵、やめろ!」急いで理絵さんから剃刀を奪い取ると、彼女は「死ななきゃ。私、死ななきゃ」とかすれた声で言いながら、剃刀に手を伸ばしてきます。卓也さんが理絵さんを平手打ちすると、理絵さんはばったりと床に倒れ、そのままかすかな寝息を立てて寝てしまいました。 「なぜ、死のうなんて。オレたち、毎日楽しくやってるじゃないか」

一時間ほどして理絵さんは目を覚ましました。「あ、お帰り。何?私、寝ちゃってたの?」のんびりとした声で言い、無邪気に微笑む理絵さんに、卓也さんは驚きながらも「なぜ、あんなことをしたんだ?」と聞きました。ところが、理絵さんは「あんなことって?」と目を丸くして聞き返すのです。そこで、さっきの話をすると、理絵さんは「何それー!?」と声を張り上げました。「なんで私が死ななきゃいけないの?やっと卓也と毎日一緒にいられるようになったんだよ。仕事も充実してるし、一番自殺から遠い人間じゃないの」 そう言われると、卓也さんはさっき見た光景が幻だったかのように思えてくるのでした。

しかし、卓也さんは二日後、それが幻ではないことを実感させられます。その日はバイトが休みのため、朝から自宅で勉強をしていた卓也さん。資料が必要となり、図書館まで出かけました。そして帰ってくると、戸締りして出たはずのドアが開いているのです。不審に思いながら中に入ると、冷たい風が吹いてきます。「窓も開いてるのか?」窓に近づいた卓也さんは驚きました。ベランダには理絵さんの姿があったのです。しかも、彼女は柵を乗り越えようとしているのです! 「理絵、やめろ!やめてくれ!」 慌てて理絵さんに後ろから抱きつくと、理絵さんは二日前と同様に「死ななきゃ。 私、死ななきゃ」とかすれた声で言って抵抗しました。 力ずくで柵から引き離し、部屋に連れ戻すと、理絵さんはばったり床に倒れ、また寝息を立て始めたのです。 この日の卓也さんはそのまま理絵さんを寝かせてはおきませんでした。身体をゆさぶって起こし、こう言ったのです。「霊能力者に相談しよう」

電話占いニコールのホームページを見つけ、一緒にお電話をくださったお二人。電話がつながった瞬間から、悪霊の気配に圧倒されるほどでした。霊視の結果、理絵さんには自殺した女性の霊が取り憑いていることがわかったのです。 その女性も恋人と同棲をしていましたが、彼に新しい彼女ができて、家を追い出されてしまいました。絶望した彼女は自殺を図りますが、剃刀を使っても傷が浅かったり、睡眠薬を飲んでも吐いてしまったりと、何度も失敗に終わります。しかし、最後は実家の物置で首を吊って死んだのでした。 ところが、彼女はまだ自分が死んだことに気がつかず、浮遊霊としてさまよいながら、自分と似た境遇の女性に憑依しては自殺を繰り返しています。彼女に取り憑かれて自殺した若い女性が4人いることもわかりました。「危ないところでしたね。でも、もう大丈夫。霊に貴女はもう死んでいるということをじっくり言い聞かせ、除霊・浄霊しました。もう理絵さんが危険な行動を取ることはありませんよ」そう言うと二人が目を見合わせて微笑んでいる姿が霊視で浮かびました。この二人ならきっとこれからも助け合いながら、愛を育んでいくことでしょう。

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